まあストーリー自体は、よくよく考えてみれば大した話じゃないんだけどね。
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その証拠に、ブラッドリー・クーパーが演じる主人公のロリーが、自分の犯した罪に悩んで妻に告白したり、妻が彼を受け止めようと努力したりする場面が、この映画の中で一番面白くない。

けど、やたらと映像に雰囲気があって、音楽もいいし、3つぐらいの話を交互に錯綜させながら進んでいく、その展開の仕方のほどほどのややこしさがまた良い。

そしてなんと言っても、名も無き「原作者」である老人を演じる、ジェレミー・アイアンズの演技やセリフがすごくいい。

冒頭と、あとたま〜に出てくる作家。映画のメインストーリに見える「ロリーの話=ザ・ワーズ」の作者ということになっている。だからこの脚本は、作家と作品という対が、3重の入れ子構造になっている。ロリーの話の中に、老人の若い時の話があり、さらにそれらが「ザ・ワーズ」の作者によって語られる。場面場面によって、それぞれが主人公になり、それぞれの話が主たる話に見える。

デニス・クエイドが演じるこの作家は、近づいてきたダニエラという女性と、最後のほうで妙なやりとりがある。きっと見た人は、このはっきりしない終わり方に消化不良を起こすので、映画の評判が分かれるところ。

でも僕の感覚では、セリフからして、きっとこのクレイという作家の過去が、ロリーなのだと思う。名声を得た自分の過去を小説にしてくるんでしまった彼は、ロリーの物語を作ったことで、実は彼自身の真実にまだ向き合っていないということじゃないか。「やがて現実と虚構の区別が無くなる」という彼のセリフが、そんなことを想像させる。 そしてそこを、映画ははっきり言わないけれど、そうじゃなかったらこのメインストーリーと一見関係ないクレイの話を、最後にやや長めにやる必要はない。クレイがどこか不安そうな表情で終わる必要もない。