2011/10

スティーブ・ジョブズの友人

近くにある温水プールも夏場はひどく混んでいるので、季節外れに行こうと思い、関西復帰後9月末から時々通うことにした。しかし体力減退を異様なほど実感する。若い頃とはもちろん、40代と比べても続けて泳げる距離が極端に落ちた。同じレーンで、おそらくずっと水泳を続けてきた方だろう、自分より年上に見える女性が延々と長距離をこなしていてさすがに落ち込む。

さて歳と言えばスティーブ・ジョブズが亡くなりました。56歳という若さで。全く残念です。数年前のアップルのプレゼンからすでに、異様な激ヤセだったので、何か病気だろうとは誰もが思っていたでしょうが、こんなに早く亡くなるとは思いませんでした。

世間ではジョブズの名言集などを書いた本が愛読されているらしいけど、彼をカリスマ視するそういう出版物が日本で増えてきたのは、iPod、iPhoneあたりが出てきた頃からではないかと思います。私の中のイメージでは、ジョブズはアイデアとマーケティングの天才であって、技術者としてはそれほどでもなく、多くの優秀なスタッフに支えられてきた人と思っています。iPodなんて典型的で、MP3のプレイヤーなんて当時誰もが考えていたでしょう。それをあんな形で、ウォークマンを継いだソニーの商品が完敗してしまうほどヒットさせるのは、機械の外観だけでなく操作性、それも使う人々の生活感覚までも変えるようなデザイン性に常にこだわってきたジョブズという人の才能。iPhoneだって、あれがなかったら今のスマートフォン時代が訪れたかどうか。同じように既存のパーツ(要はPCパーツ)を使って作ったXboxがいまいちパッとしないのと比べると、マーケティング戦略というものが商品開発にいかに重要かということの証です。デザインって単なる外観では無いってことですね。もの造りに長けた日本人に欠けているのは、こういう商才だというのはほんとにそうです。

そういう意味では彼は天才ですが、ただジョブズの悲報を伝えるニュースがちょっと単純化されてて偏ってるのが気になります。孫正義みたいに「ジョブズは後の世でレオナルド・ダビンチと並び称されるだろう」とまで言われると、いや実際の物作りをしたのはジョブズが率いた技術者たちだよと言いたくなる。彼こそが今のパソコン文化を作ったとか、アイコン(GUI)とマウスによる操作を発明したとか、そこまで単純化されるとちょっと違う...っていうか間違ってると思います。「アップル創業時に友人と『Apple I』『Apple II』を創って、これが世界初のパーソナル・コンピュータとなった」といったニュースがこのところやたらTVで流れてますけど、その友人のこともっとちゃんと報道してやって下さい!!いや実際この記事、TVで彼のことが何度も「ジョブズの友人」で片付けられてて、名前も言ってくれないのがなんとも腹立たしくて書きましたw

スティーブ・ウォズニアック

『Apple I』『Apple II』もほとんど彼が作ったのですよ。彼こそ技術者として天才で、ジョブズの訃報の横っちょに単なる友人とか、相棒の創業者程度に紹介すべき人ではないのです。彼はたしかに技術オタクで商才は無かったでしょうが、アップルという会社は技術のウォズニアックとアイデア&マーケティングのジョブズという両スティーブの2人三脚で始まった会社なのですよ。

それに、アイコンやマウスといった今日のパソコンの原型を作ったのもスティーブ・ジョブズだ、というのも間違った報道だと思います。

ビットマップディスプレイとマウスという今日のPCの原型は、パロアルトというゼロックスの作った研究所で作られた「Alto」に始まり、それを見たジョブズが「Alto」の設計思想に多大な影響を受けて後のLisaやMacintoshに繋がっていくのです。Windowsというのはそのアップルに影響されて、マイクロソフトがGUIを採用した結果生まれたもの。ビル・ゲイツのマック好きは有名で、当時マイクロソフトは社内の秘密の部屋でアップルの新製品が出るたびに、その解体と研究を続けていたとかいう話。

ジョブズが「思想」とまで言うほどその設計が斬新であった「Alto」を開発し、Dynabookプロジェクトの中心人物、「パソコンの父」とまで称せられる人が、

アラン・ケイ

Smalltalkという先進的言語を創り、日本発のRubyなど今のオブジェクト指向言語のベースを考えたと言える人物です。

ジョブズの功績で評価したいのは、アップルを追われた後作った会社で開発したNEXTSTEPというOSです。パソコンというよりサンのソラリスのようなワークステーションで、一般の目に触れるようなものではありませんでしたが、当時ディスプレイの中で4つのサブディスプレイが別々の動きをする、つまり本物のマルチタスクなデモや、アイコンなどが自由に大きさを変えるディスプレイ・ポストスクリプトといった技術を見て、ひどく感動しました。このNEXTSTEPが、後の MacOSX や iPhone、iPadのOSであるiOS に繋がっていくと言えば、すごさが分かってもらえるでしょうか。でもNEXTSTEPだってジョブズはアイデアマンとしてのイノベイター的役割が大きく、一緒にNeXTコンピュータ社を作ったまわりの技術者たち(アップルからジョブズが引き抜いた人も居たとか)がいなかったらありえなかったものなのでしょう。

ジョブズの周辺には他にもジェフ・ラスキン、ビル・アトキンソンとか、BeOS(あのデスクトップのデザイン好きだったんだけど...)のジャン=ルイ・ガセー(一時はアップルのフランス法人の社長)など、魅力的な人物が沢山居て、皆マーケティングの才能ではジョブズに及ばず、また多くはジョブズと仲悪かったりして面白いです。

Wikipediaに載っているジェフ・ラスキンの言葉が、スティーブ・ジョブズという人への賛辞と怒りを表しているようで笑えました。

「他人の脳みそを盗むのはジョブズにとって普通のやり方さ。まず人のアイデアを鼻であしらっておいて、その1週間後には、素晴らしいアイデアを思いついたなんていいながら戻ってくる。そのアイデアというのは、もちろん1週間前に誰かがジョブズに話したアイデアなんだ。我々はジョブズのことを現実歪曲空間と呼んでいたのさ。」

若かりし頃の Steve Jobs and Steve Wozniak

Stevejobsstevewozniak
posted by jgb at 17:25 | Comment(3) | TrackBack(0) | Linux・PC雑ネタ
この記事へのコメント
スティーブ・ジョブズ死直後、ピクサー社に美しく大きな虹かかる―【私の論評】私も虹を見た!!

こんにちは。普通の技術者と、ジョブスの違いは、ジョブズは、社会変革を行ったことだと思います。これに関しては、生粋の技術者は不得意です。あのエジソンも、起業家としては落第でした、電話を発明したグラハム・ベルも、起業家としての道は歩めず、一生聾唖者教育にまい進しました。ところで、スティーブ・ジョブズは、ピクサー社から収入を得ているので、アップルからは収入を得ていなかったことは有名です。そのピクサー社にスティーブの死の直後に美しく大きな虹がかかったそうです。これは、ピクサー社の社員がiPhoneで撮影したものだそうです。私は、この写真を見た直後にふと車窓から外を見ると、虹が見えたので、思わず車を降りて、虹を撮影しました。私のブログには、この写真と、私のジョブズへの想いとして、私たち自身が"One more thing"をつくり出すことによって、より良い社会になることを確信していることを掲載しました。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。
Posted by yutakarlson at 2011年10月09日 11:18
あれ?ダグラス・エンゲルバードは?
Posted by busayo_dic at 2011年11月16日 23:40
ああ、確かにマウスの発明者はエンゲルバートで、アラン・ケイではないですね。エンゲルバートの弟子がパロアルトに思想を持ち込み、アラン・ケイもエンゲルバートから多大な影響を受けたってことだからGUIの源流はもとを辿ればエンゲルバートってことですね。
僕にはどうもハイパーテキストの発明者という印象のほうが強いなー。
Posted by jgb at 2011年11月20日 17:17
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